博古堂のしごと
博古堂のデザイン
古典に学び、時代の感覚を足し、引き、時を越えたかたちを求める。
たとえば「ぐり唐草」・・・器の一部に彫りを施し、まわりは余白で板に残す。
室町時代の特徴をそこなわず、彫刻の存在感を大切に、しかしそこに今があるように。
バランス、密度、リズム、色などいくつかの要素を少し変化させることにより、古いものもモダンに変化する。
素材の声を聞き、彫りの魅力を最大限に生かし、漆塗りにより表情をつける。デザインは出すぎることなく、引き立てるよう。用のものは美しく用を満たす。
お客様のご要望に沿ったデザインをおこし制作するのも博古堂のしごと。家具や建物の装飾から身の回りの小さな道具まで。
素材と木地のこと
木地は北海道産の桂を用いる。冬の水分の抜けた時期に木を切り、丸太の中心の芯を避け、木目が柾目になるよう製材後、桟積みする。雨にさらし水をかけアクを抜き、1年以上乾燥させ、手のひらを当てたとき暖かさを感じるくらい乾燥したら器に加工する。丸いものならざっとおおまかに刳り、またしばらく置き、安定させる。そして轆轤で仕上げる。
指物は接着部分を一段彫り下げ、麻布を漆で張り補強する。
良材は手に取ったとき軽く、暖かい。彫りと用途に必要な厚みをとり形に仕上げる。漆を塗ることによって素地は見えないが、固い木と柔らかい木では仕上がりの肌が微妙に異なる。良い仕事は材料からはじまる。
博古堂工房のこと
肉取り、カド、マルメ、速度をおさえる、力をためる、リズム、張り、密度、鉛筆の線1本のこだわり…
彫刻部で交わされる言葉。その拘りが即ち「博古堂のかたち」となる。
まずは刀を研ぐ
初めて工房にはいると、まずは刀を研ぐ。
刀は小刀が主となり、他に平刀、丸刀、鑿、などなど。そして、線彫りといい、幅3ミリの溝をV字にまっすぐ彫れるまで彫り続ける。手が安定したら、古典を模刻して基本の技法と彫刻の構造を学び、美しいかたちを体で覚える。あとは、目と感性を養うこと。
後藤彫り
後藤彫りは、明治期に斎宮と運久が考案した使うことを考えた彫り手法。文様の輪郭線を小刀で直角にたち込み、周囲は自然な刀痕でならす。文様部は周囲を平均におさえる。これにより、文様の輪郭のカドが擦れて傷むことから保護する。周りの刀痕は、幅の広い大きな小刀で浅くつく。
塗り
塗りは道具作りから。刷毛、へら、藁たわし、塗師や刀… そして漸く木固め、下地がはじまる。
接着や目止めのための糊漆は炊いたご飯と漆を練って作る。彫りのない板面は砥の粉の錆で、彫り部分は炭粉を蒔いて肌を作る。この下地が大切で最後の仕上がりを左右する。
鎌倉彫の塗りは、彫りを殺さないよう薄く重ねることがポイントとなり、そのためには良質の漆でなくてはならない。
器の裏は刷毛目を描いて仕上げる。器に合わせて調子を変え、丈夫で見た目にも味わいがある。最後の艶を出すための摺り漆は、生上味漆を塗っては拭ききることにより、しっとりとした艶を得る。
乾口塗り
乾口塗り(ひくちぬり)も、やはり斎宮と運久が仏像の古色仕上げから考案した塗り技法。上塗り後、漆の表面の色が少し黒ずんだ頃合をみて(乾口時をみて)植物のマコモの粉を蒔きつける。
粒子が漆に沈み込み、乾いた後、藁たわしに水砥の粉をつけて研ぐと、高いところは明るく、谷は暗く陰影が出て彫刻を引き立たせる。
使い方と修理
漆は酸、アルカリ、油、高温などにも強く、万能の塗料といっても過言ではありません。唯一紫外線には弱く、変色しますので直射日光は避けてください。また、本体の木は乾燥により反ることがありますので、エアコンの風を直接あてるなど強い乾燥もお気をつけください。
使い終わったら水またはお湯で洗い、柔らかい布でよく拭いてください。油などお使いの場合は、中性洗剤を使われても大丈夫です。彫りの間が汚れたときは歯ブラシなど金たわし以外のものでかき出して後洗い、乾拭きしてください。
箱類などで彫りの間にほこりがたまった時は、筆などではらい、乾拭きしてください。
使い込むにつれ、上塗りの漆が磨り減り、中塗りの黒漆がみえてきて味わいとなります。仕上がった時の傷ひとつない塗り面も美しいですが、傷も気にならないほど使い込んだ器は、艶も色も鮮やかで使い手を感じさせます。
どうしても気になる傷や、衝撃で割れてしまった時は、接着して再生可能で、全体を塗り直し新品同様とすることもできますが、使った味わいを残し最小限の手入れが好ましく思われます。
修理代など詳細はお問い合わせください。